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未来を照らす(44)俳優 竜星涼さん

  • URPRESS 2025 vol.81 UR都市機構の情報誌 [ユーアールプレス]
未来を照らす44 Special Interview Ryusei Ryo 「芝居には人生を変えたり 豊かにする力がある」

舞台に映画、ドラマと数多くの作品に出演し、注目を集める竜星涼さん。
5月からは、舞台『昭和から騒ぎ』へ出演予定です。
芝居との向き合い方、演じることの面白さや観客への思いについて、うかがいました。

りゅうせい・りょう
1993年、東京都出身。17歳で俳優デビュー。数多くの映画、テレビドラマなどに出演し活躍中。NHKの連続テレビ小説『ちむどんどん』では主人公の兄を、大河ドラマ『光る君へ』では藤原隆家を演じた。2月公開の映画『ショウタイムセブン』にも出演。

反省はしますが、悩みません。ポジティブです

三谷幸喜さんが翻案し演出する舞台『昭和から騒ぎ』にご出演されますが、三谷さんの印象はいかがですか。

竜星涼さんの写真(1)

三谷さんの舞台は『大地』(2020年)が初めてで、今回が2作目です。三谷さんの演出は、俳優に任せて、責任を持たせてくださるようなやり方でした。だから自由にできたのですが、一方で、どこか試されているような緊張感もありました。

『大地』はメッセージ性が強い作品で、コロナ禍真っ只中での上演ということもあって、あの状況下で、役者である自分に何ができるのだろうか、と考えさせられました。芝居で人の人生を豊かにできることも、人生を変えてしまうこともあります。だからこそ、丁寧に演じて芝居をお客さまに届けていきたいと、あの作品で思いました。

『昭和から騒ぎ』は、シチリアが舞台のシェイクスピア作『から騒ぎ』を昭和の鎌倉に置き換え、三谷さんらしい解釈で恋模様が描かれた喜劇です。台詞の応酬が楽しいんです。

僕は恋に落ちて、最初にこの芝居を動かす旅役者の役。男の子が初めて恋をして、周りから何を言われても、盲目的に突進していく様が表現できたらいいなと思っています。恋する相手とすれ違っていく様は、真剣であればあるほど面白いものです。そこをどこまで出していけるのか、僕も真剣に向き合っていきたいと思っています。

本番を重ねながら、変わっていくのが演劇の面白いところでもあります。もちろん、初日から千穐楽(せんしゅうらく)まで同じように演じていますが、長くやっていて慣れてきたときに、役者それぞれに気づきが生まれて、余計な自意識が削ぎ落とされていきます。常に進化して、役を深めて芝居を充実させていけるのが演劇の楽しいところでもありますね。

どのようにして役を深めていきますか。

まず、演じる人物のプロフィールを書き出します。その人の血液型を考えることも面白いですし、家族構成も大事にしています。一人っ子なのか、一番上、真ん中、末っ子なのかで性格が違ってくるので、そういう掛け算をして役を作っていきます。

映像作品は、自分である程度考えたものを演じて見せていく作業になります。一方、舞台は稽古期間が長いので、共演者の皆さんがどのようなアプローチで作り上げていくのかをじっくりと拝見することができます。それによって、僕は足し算、引き算をしながら、本番が始まるまで失敗を恐れず、試行錯誤しながら前に進み続けます。

うまくいかなかったという経験も大事だと思っています。今日はテンションが上がりきらなかったなぁ、残念! ということもあります。でも、そういう気持ちを引きずっても1時間ぐらい(笑)。もちろん反省はしますが、悩むことはありません。

落ち込んでいる人に相談されたときは、「失敗して怒られようが、死なない」と話すくらい、僕は怒られることに恐怖を持たないので、演技で何を言われても萎縮しません。次につなげればいいとポジティブに考えています。

転機となった作品は何ですか。

自信を持てるようになったのは、劇団☆新感線(しんかんせん)の舞台『修羅天魔(しゅらてんま)〜髑髏城(どくろじょう)の七人Season極(ごく)』です。

それまでは演じることが難しくて、芝居をしていても自分がレベルアップしているのかもわからなかったですし、何も感じとることができず、全く自信が持てなかったんです。

同世代の俳優たちがどんどん賞をとっていくなかで、僕はそういう評価を得られていませんでしたから、20代の頃は羨んだり妬んだりしたこともありました。

この舞台はターニングポイントにしなければいけないと、台本をいただいたときから思った作品でした。僕が演じた役柄は、新感線さんの代表作である『髑髏城の七人』に出てくるキャラクターの全部がまとまったような人物でした。台本を読んで、これだ!とわかりました。生かすも殺すも僕次第。ここで僕が変わらなければ、なりたい俳優像には近づけないと思いました。

それまでアクションはよくやっていましたが、本格的な殺陣(たて)や女形は初めてでした。稽古が始まる前に、正月も休まずに自主練をやりました。あとになって、「まだやれたかな」とは思いたくなかったですし、後悔もしたくなかったです。つらかったし、疲弊もしました。でも、これをやりきれば何を言われようが、「これ以上、俺にはできない。それ以上は俺の実力不足」と言い切れます。自分の限界までやろうと覚悟を決めました。

結果的に、多くの先輩方がこの舞台を観てくださり、褒めていただいたことが一番大きな自信になりました。自分がやってきたことは間違っていなかったという手応えも得られて、それからは、役を楽しめるようになりました。

でも、この作品では自分のことで精一杯で、新感線の人たちと一緒に楽しむことがあまりできなかった気がして、また次の機会がいただけるなら、今度は皆さんと楽しみながら芝居がしたいなと思っています。

創作で大事にしているのは美しいこと、そこなんです

役者でなかったら、どのような仕事に就いていましたか。

竜星涼さんの写真(2)

パティシエになっていたと思います。岡田惠和さん脚本の『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~』というテレビドラマを子どもの頃に観ていました。作品自体がとても美しくて憧れました。

今も僕が創作のなかで一番大事にしているのは美しいこと、そこなんです。

ただ、学生の頃、パティシエになってパリに行って、とシミュレーションしてみたら、いや違うなと感じたことがあって(笑)。ちょうどその頃にスカウトしていただき、この世界に飛び込みました。

デビューは2010年のテレビドラマ『素直になれなくて』で、その後、モデルの仕事もするようになり、パリ・コレクションに2年連続(16、17年)で出させていただきました。子どもの頃の夢とは違う形でパリに行くことはできましたが(笑)。

普段、どのようなことでリフレッシュしていますか?

温泉へ行くこと、おいしいものを食べること、海と山どちらも捨てがたいですが、外のいい空気に触れることが大好きです。それから洋服を自分で選んで着るのも楽しいですね。ファッションは自己満足かもしれませんが、自己表現の場でもあると思っています。それで気持ちが豊かになるのならいいと思います。

好きな洋服を着て、好きな場所で、好きな人たちに会う……。一番自分らしくいられる時間で、リラックスできます。

趣味は他に何かありますか?

体を動かすのが好きで、キックボクシングによく行きます。トレーニングのひとつです。僕はやり始めるとハマっちゃうんです。もっと強くなりたくなって。うまく乗せてくれる人がいると伸びるタイプです(笑)。

今後どのような役者になりたいですか。

竜星涼さんの写真(3)

誰かに求めていただけるのは、すごくうれしいことで、常に呼んでいただける俳優になりたいです。

僕は喜怒哀楽がはっきりしていて、感情豊かなほうなので、演じることが自分でも合っていると思っています。プライベートで起きた出来事で、怒ったり、泣いたり、笑ったりした感情を演技に取り入れたりもします。それで褒めていただける仕事はそうないですから、役者という仕事に就いてよかったと思っています。

ひとりでも僕の芝居を観たい人がいれば演じたいですし、そして芝居を観てくださる方の人生に、少しでも寄り添えたら、うれしいです。そう思いながら、まっすぐ芝居に向き合いたいと思っています。

舞台『昭和から騒ぎ』

三谷幸喜の手で、シェイクスピア原作『から騒ぎ』が昭和の鎌倉を舞台にした、ある家族と旅芸人一座の物語に。聞き耳、立ち聞き、盗み聞き……。虚実が飛び交い、騙し騙され振り振られ。三谷幸喜が描く恋の行く末は⁉

昭和から騒ぎのポスター

河合祥一郎訳「新訳から騒ぎ」(角川文庫)より
翻案・演出:三谷幸喜
出演:大泉洋、宮沢りえ、竜星涼、松本穂香、松島庄汰、峯村リエ、高橋克実、山崎一

【東京公演】5月25日~6月16日(世田谷パブリックシアター)
【大阪公演】6月20日~23日(SkyシアターMBS)
【福岡公演】6月27日~29日(キャナルシティ劇場)
【札幌公演】7月4日~6日(カナモトホール)
【函館公演】7月9日~10日(函館市民会館) *いずれも当日券あり。
問 :シス・カンパニー TEL : 03-5423-5906 

【小西恵美子=文、青木 登=撮影】
【ヘアメイク=oya、スタイリスト=YAMAMOTO TAKASHI(style³)】

動画

俳優 竜星 涼さん

芝居には人生を変えたり
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